これまでの歴史と現在の役割
患者さんの変化
1960年代にイギリスで始まったホスピスケアの概念が1980年代に日本にも導入され、それ以降日本ではホスピス緩和ケア病棟と呼ばれる施設が各地に設置されるようになりました。近代医学・医療が掲げる第一目標は、病因を明らかにし治療法を解明することでした。これにより医学が発展し、感染症をはじめとした多くの病気を治せるようになりました。現在ではがんも早期であれば手術などで治すことも可能になってきています。
昔はがんの診断は本人には伝えられることなく、死を意識して過ごすという場面は今ほど多くありませんでした。しかし、現代ではがんなどの難病であっても患者さん本人が知りたいという傾向が強くなったため、病気について詳しく理解した上でより良い治療に向けて患者さんが自ら参加することが多くなりました。
緩和ケアの始まりと役割
がんなどの難病の告知を受けた人の多くは、病気自体が治らなかったとしても残された貴重な時間を自分らしく有意義に充実させたいと願います。そこで病状が進んだ状態の療養生活の質であるクオリティオブライフをどう改善できるのか、維持できるのかという問題が生じます。治癒を目標とするこれまでの医学ではこの問題の解決ができず、緩和医療と緩和ケアの新しい分野が始まりました。緩和医療と緩和ケアはがんなどの進行性難治性疾患に対して、治癒の目標達成が難しい場合でも苦痛の緩和を目指す医療なので、療養生活の質を向上させる役割があります。
緩和ケアとホスピス
日本でいうホスピスはがんの末期医療を行う施設なので、終末期を扱う医療施設といえます。それに対して緩和ケアは、治癒が難しい進行性の疾患で苦痛の緩和を目標とする医療やケアを指すので、ホスピスよりももっと広い概念を持ちます。そのため終末期患者だけではなく、状態の良い進行期の患者さんもケア対象です。
このような緩和ケアの概念はまだ普及しているとはいえません。日本では終末期のがん患者さんが緩和ケアの対象者のほとんどを占めていたため、緩和ケアはモルヒネ等の医療用麻薬によって痛みを和らげ、最期の時間をご家族と一緒に有意義に過ごすといったイメージがあります。しかし、WHOが推奨する「早期からの緩和ケア」が重要視されるようになり、ここ5年ほどで抗がん治療と同時並行で緩和ケアを提供することも珍しくなくなりました。これからはもっと緩和ケアの正しい概念が広がり、その役割に期待されることが増えていくはずです。
寄り添った看護を目指す人へ
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緩和ケアの求人は数が少ないため、ひとつの求人に応募が殺到してしまいます。応募倍率が高い緩和ケアの求人であっても、「レバウェル看護」を活用すれば徹底したサポートで採用を勝ち取ることができます。
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緩和ケアはチームで取り組むものなので、チームの一員として看護師に求められる役割があります。看護師はチームの中で患者さんに最も近い存在ですので、患者さんの状態をしっかりと把握し、チームに共有していきましょう。
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最近よく耳にする緩和ケアとは一体どのようなものなのでしょうか。一昔前までは治癒の見込みがない患者さんに行うケアでしたが、現代では定義が変わっています。