緩和ケアの重要性について
考え方の変化
以前は緩和ケアは治療の余地がなくなってしまった患者さんに対して行われるものとWHOで定義されていました。そのため、がんであれば末期で治療による効果が望めなくなった患者さんが、がん治療から緩和ケアに移行するという考え方です。しかし、1990年にがん患者さんへの緩和ケアは診断時から治療と並行して行われるべきであると示し、がんのすべての経過に関わるケアへと変わりました。
診断時に痛みなどの症状がある場合は鎮痛薬などが処方され、がんと告げられたことによる気分の落ち込みといった精神的な面へのケアをします。治療中は抗がん剤や放射線治療の副作用予防や対処を含めて対応し、これらすべてが緩和ケアで行われます。
このように緩和ケアの考え方が変わったのは、早期発見が可能になったことや抗がん剤治療などの技術が進歩したことが理由として考えられます。昔であればがんと診断されると手術による切除ができなければ予後も厳しいとされていましたが、医療の進化により診断されてからの生存期間が大幅に延長されました。その結果、治療と緩和ケアの併用によって充実した療養生活を送ることが重要視されるようになったのです。
早期段階から緩和ケアを受ける重要性
2010年にハーバード大学などのグループが発表した論文に、早期からの緩和ケアを受けることで生存期間を延ばす可能性があると示しています。この論文では転移を伴う肺がんの患者さん151人を「標準的ケアと緩和ケアを行う」グループと「標準的ケアを行う」グループの2つに分け、治療の経過を観察しています。緩和ケアを行うグループは診断時から定期的に専門家から診察を受け、行なわないグループは必要に応じて専門家から診察を受けます。
この研究の目的は生存期間に関するものではなく、療養生活の質とうつ病などの精神症状の関連性を調べるためのものでした。その結果、本来の目的ではありませんでしたが、「標準的ケアと緩和ケアを行う」グループは療養生活の質が高く、うつ病などの精神的な症状が少ないということがわかりました。さらに、生存期間の中央値が統計学的に長く出ていました。
副産物のような形で生存期間を延ばす可能性があるわかりましたが、生存期間に関することにフォーカスをあてた研究ではないため、このデータだけでは結論づけることはできません。しかし、この研究成果により早期からの緩和ケアは非常に重要なものだという認識が広がりました。
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緩和ケアはチームで取り組むものなので、チームの一員として看護師に求められる役割があります。看護師はチームの中で患者さんに最も近い存在ですので、患者さんの状態をしっかりと把握し、チームに共有していきましょう。
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最近よく耳にする緩和ケアとは一体どのようなものなのでしょうか。一昔前までは治癒の見込みがない患者さんに行うケアでしたが、現代では定義が変わっています。